断然、賃貸派。自分の最期に身寄りがいなかったらどうなるの?
という方向けの記事です。
誰にも迷惑をかけたくない、お金をかけたくない、そんな不安な気持ちを拭えるような記事を心がけました。
この記事でわかること
- おひとりさまが亡くなった後、相続財産や遺品整理はどうなるか
- 誰が処分してくれるのか
- お金をどのくらい遺しておけばいいのか
この記事を書いている人
現役CFP(FP1級)です。
ファイナンシャルプランナーとして、経験した事や勉強した事を記事にしています。
こんな方におすすめ
「おひとりさま」という呼び方が適切かどうか迷うところもありましたが、便宜的に使用します。
迷惑をかけたくない
一人で自立して生きているんですから、最後まできちんとしたい気持ちがあると思います。
お金をかけたくない
どれぐらいお金がかかってしまうのか、気になりますよね。
どのぐらいお金を遺しておけばいいか知っておけば、安心です。
死後の面倒をみたくない身内がいる人
おひとりさま本人ではなく、そのおひとりさまと親戚関係にある方など。
身内だからといって、色々な事情で関わりたくない場合もあるかと思います。
おひとりさまの最期が心配な賃貸オーナー
おひとりさま側ではなく賃貸オーナーの方。
超高齢化社会&シングル増加で、おひとりさま入居者の最期にそなえるために気を揉んでいると思います。
実体験
アパートオーナーからの相談
アパートオーナーの方からある相談を受けました。
一人で住んでいたご高齢入居者の方が行方不明になって、警察の捜索により近所の外で亡くなっていたそうです。
死因は不明。おそらく、その方は身体的精神的の両方の病気を患っていて、その病気が原因と推測されました。
アパートオーナーとしては、お悔やみの気持ちがある一方で、あたらしい入居者を迎え入れられるように一刻も早く部屋を片付けてほしい気持ち。
しかし、管理会社はきちんと対応してくれてはいるものの「遺品整理」がなかなか進まず。
その大きな理由は、身寄りがいないことでした。
そんな相談があったので、身寄りがいない入居者(賃借人)が亡くなった時の仕組みや流れを記事にまとめてみました。
身寄りがいないおひとりさまとは
人間、だれでも死を迎えます。
現在は付き合いのある親戚がいても、将来は何があるか分かりません。
おひとりさまが死ぬ時、身寄りがいない状態とはどんな状態をいうのか、整理します。
戸籍上の身寄りがいない
イメージどおりの「おひとりさま」です。
現実の世界はもちろん、戸籍上も頼れる家族親戚がいない状態です。
相続人全員が相続放棄
たとえ現実の世界や戸籍上に家族親戚がいたとしても、その人たち全員が自分の「財産(遺品)」を引き継ぐことを拒否した場合。
自分が遺す財産は、預金や不動産など資産になるいわゆる「良い財産」だけでなく、借金や遺された人にとっては不要な遺品などいわゆる「引き継ぎたくない財産」があります。
つまり、身内全員が自分の相続財産を放棄した時、その相続財産はだれかが処分(=遺品整理)しないといけません。
相続人はいるが、その相続人が行方不明
戸籍上に家族親戚はいて、昔から関係良好だったとしても、自分が死ぬ時にその人が行方不明になっていたらどうにもなりません。
余談ですが、行方不明者の相続発生時は「不在者財産管理人」を選任して、相続財産の処分を頼まないといけません。「失踪宣告」をおこなってから不在者財産管理人の選任をするケースもあるかもしれません。
身寄りがいないおひとりさま死亡後の流れ
登場人物
登場人物 | 説明 |
---|---|
おひとりさま本人 | 主人公 |
申立人 | 相続財産清算人を選任するために家庭裁判所に申立てする人(≒利害関係人が多い) |
相続財産清算人(相続財産管理人) | 代わりに相続財産を処分する人 |
利害関係人 | 様々な理由で相続財産をもらうべき人 |
家庭裁判所 | 諸々の手続きをする仲介・監督役 ※おひとりさまが亡くなった最後の住所地の家庭裁判所 |
相続財産清算人
相続財産清算人とは、身寄りのいない亡くなった方の代わりに相続財産を処分する人。弁護士などが担います。
相続財産清算人の権限は、「保存行為」と「管理行為」のみ。つまり、相続財産を勝手に「売却」したり「遺産分割協議」をしたりできません。それら権限を得るために、あとで出てくる『権限外行為許可』の申請を家庭裁判所におこないます。
利害関係人
利害関係人とは、たとえば「(故人であるおひとりさまが借金していた場合の)債権者」「特別縁故者」「受遺者」「遺言執行者」「相続財産の共有持ち分権者」「成年後見人」など。
亡くなったおひとりさまが借金をしていた場合、貸し出していた銀行はお金を返してもらいたい立場になります。そこで、たとえば相続財産の中の不動産を売って現金にして、返済してもらいます。
家庭裁判所
家庭裁判所は、諸々の相続財産処分手続きをする際の監督役です。相続財産清算人が身勝手に処分をしないように、法律にしたがってちゃんと処分しているか見張る役割ですね。
「相続財産清算人」の選任後 STEP1~7
選任後1月以内に作成しないといけないようです。
家庭裁判所をつうじて、相続財産清算人が選ばれたことを公告します。
また、家庭裁判所をつうじて、相続人を捜していることを公告します。
公表期間は、6ヶ月以上の期間を設けないといけません。
期限内に現れなければ、「相続人がいないことが確定」となります。
家庭裁判所をつうじて、債権者や受遺者を捜していることを公告します。
公表期間は、2ヶ月以上の期間を設けないといけません。
おひとりさまの特別縁故者(内縁の妻(夫)など)に対して、相続財産分与の申し立てをするか伺いを立てます。
※STEP2で相続人がいないことが確定後、3ヶ月以内におこなうこと
清算人の権限は相続財産の「保存・管理行為」のみ。「処分(売却)」「遺産分割協議」をおこなうための権限を申請。
債権者には借金を返済。相続財産を分け与えるべき人がいるなら財産分与。
返済をして、財産分与して、それでも残った相続財産は、国のモノにします。
相続財産清算人の仕事まとめ
相続財産清算人の仕事
- 「財産目録」の作成
- 相続人を捜す
- 債権者を捜す →「返済」
- 特別縁故者を捜す →「財産分与」
- 「権限外行為許可」の申請 →「売却」や「遺産分割協議」など
- 残余財産の「国庫帰属」
諸々の費用
相続財産清算人の選任
収入印紙代
収入印紙代として数百円。
官報公告代
官報公告代として数千円。
家庭裁判所をつうじて公告するための費用ですね。
- 官報とは
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国が発行する新聞のようなもの。法改正や相続関連などの情報を掲載する。
予納金
予納金として数十万円(~約50万円)。
- 予納金とは
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相続財産清算人が相続財産を管理するために必要な費用に不足が出ないように、申立人が家庭裁判所にあらかじめ預けておくお金。余ったら返してもらえます。(相続財産清算人に対する報酬を含みます)
予納金(相続財産清算人への報酬)を支払うのは、利害関係人。つまり、その人たちのために数十万円を遺しておけばよさそうですね。そうすれば、特に特別縁故者である内縁の妻や夫、名指しして相続を遺した受遺者たちは困らずに済むと思います。